森の贈り物表紙へもどる|頁作成:NOKO:2014-12-20|


カラタチバナ(サクラソウ科ヤブコウジ属・以前はヤブコウジ科)

カラタチバナは、林床に生える常緑の低木で、冬に赤い実をつけます。
赤い実をつける植物としては、お正月に生け花に使うセンリョウ(千両)、鉢植え飾りに使うマンリョウ(万両)があります。
赤い実をつける植物を並べて、縁起担ぎのごろ合わせで、「一両、十両、百両、千両、万両、有り通し」として呼ばれものがあります。カラタチバナはこの「百両」になります。ちなみに昔のお金の一両は、今のお金の13万円くらいだそうです。

ここで言われている植物は 、

「一両」は、アカネ科の アリドオシの仲間 とする説と、高山植物でツツジ科の
  アカモノ とする説があります。
「十両」は、サクラソウ科の ヤブコウジ(藪柑子)
「百両」は、サクラソウ科の カラタチバナ(唐橘)
「千両」は、センリョウ科の センリョウ(千両)
「万両」は、サクラソウ科の マンリョウ(万両)
「有り通し」は、アカネ科の アリドオシ(在通し);果実が、翌年の花が咲く頃まで残っているのでついた俗名

一両から始まって、1年中お金が有り通しまで続けるのなら、一両はアカモノということになるのでしょうか。


アカモノ(一両) ツルアリドオシ(一両) ヤブコウジ(十両)

カラタチバナ(百両) センリョウ(千両) マンリョウ(万両)

私たちのフィールドでは、「一両」と呼ばれるものはまだ見つかりませんが、
オオアリドオシ(ニセジュズネノキ)は、少数ながら金沢区内にありますので、今後見つかる可能性はあります。
「十両」のヤブコウジは、いたるところで見ることができます。
「百両」のカラタチバナは、生えている場所が限定的です。 「千両」と「万両」は、住宅の庭に植えられたものの実を鳥が食べて、その鳥が種子を運んできて育った、いわゆる逸出(いっしゅつ)と思えるものだけという状態です。

数が少ないカラタチバナについて

我々のフィールド内では数が少ないので、赤い実をつけて目立つようになると、盗まれることが多い植物です。
金沢自然公園内でも、林床の手入れを続けたら、2本のカラタチバナが出てきて赤い実をつけるようになりましたが、3年後には掘り取られて消えてしまいました。 せめて、その他のエリアにあるものは、大切にしたいと思います。

生育地の環境が変わると生きていけない植物は、たくさんあります。 荒れて暗くなった林の中で、弱い植物は姿を消してしまいます。 環境が変わって、また花を咲かせられるようになる時まで、種子の形で長い眠りにつきます。
これを、『埋土種子(まいどしゅし)』と、呼びます。
種子の形で50年くらいは眠っていても、条件がととのえば芽を吹くと、いわれています。
特にその期間が長いので有名なのが、「大賀ハス」です。
東日本大震災で津波に襲われた場所から、絶滅危惧種だった「ミズアオイ」が、たくさん目覚めて花を咲かせたのも、『埋土種子』が、目覚めたからです。

我々のフィールドでも、林床の手入れを続け、陽が差し込むようになると、そのような『埋土種子』が芽を吹き育ち始めます。 カラタチバナも、そういう植物のひとつです。

カラタチバナの姿・形を覚えましょう!

センリョウは葉の上に赤い実が付き、マンリョウはやや濃い緑の葉の下に実がぶら下がります。
カラタチバナはセンリョウより細長い葉の下に、赤い実がぶら下がるようにつき、葉の付け根は赤みを帯び、縁には鋸歯(ギザギザ)があります。 まだ株が育ち切っていない時は、葉だけなので、間違えて刈り取らないようにしましょう。
カラタチバナの果実 幼いカラタチバナの株 カラタチバナの葉


活動中のお約束 ; 「持ち出さない」 ・ 「持ち込まない」

里山に生えている植物は、人間社会で言うと地主さんの所有物です。
だから、掘り取って持ち帰るのは、盗み(軽犯罪法違反)になります。
植物は、その場の環境にあったものが生えて来ます。 人為的に場所を動かすと、数年しか生きられない場合がほとんどです。 したがって、植物の立場から言えば、少し恐ろしい表現ですが、誘拐され、監禁され、殺されることになります。そこで、私たちのフィールドから、植物を根から掘り取って持ち帰るのはやめましょう。
どうしても欲しくなった時は、せめて種子を数個いただいてきて、育てるだけにしましょう。

里山に、家庭で育てた園芸植物を持ち込むのは、やめましょう。
家庭の庭には、外国から輸入された植物など、多種多様なものが人工的に植えられています。
時には、細菌やウイルスに侵されたものもあります。 それを里山のような、より自然度の高い場所に植えこんでしまうと、山全体に病原菌などを広めてしまいかねないからです。
もう一つの危険性は、遺伝子の攪乱です。 庭に植えられたものは、日本に自生する植物でも、この地域のものとは限りません。 自然の状態で移動できる距離(せいぜい1キロ程度)を超えて、人為的に植物を持ち込むと、その場所にもともとあった同じ種類のものと、遺伝子が混ざってしまうことがあります。 また、場合によっては、自生種を絶滅させてしまう事もありうるからです。

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