2014/12/21 更新


里山保全の必要性を再度考えてみよう

近年、里山の管理が放棄された一番の原因は、燃料革命である。かつて、間伐材、倒木、下刈りした笹・柴は、全て燃料として採取された。その他、肥料としての落葉掻き、建築用材、家具用材、道具用材に使われた。しかし、薪炭材は化石燃料に、肥料は化学薬品に、用材は安い輸入材に代わり里山は生産性がなくなった。また、その他の木質材の用途にパルプ材があるが、里山に限定すれば問題外である。
間伐の必要性
里山の管理が放棄された結果、樹木の過半を占める人工林(針葉樹)の最適な生長は、適度な間伐ではじめて実現できるし、二次林(主として広葉樹)も間伐なしには最適な生長はもとより萌芽更新が出来ない。鬱蒼とした高木で樹冠が閉鎖され、林床に光が届かず、林床の発芽が妨げられ,植物の多様性が減少してしまう。植物の多様性は、多様な餌や営巣場所など、重要な資源の提供を通じて多様な動物の生活を支える。昆虫や鳥や獣は、花粉や種子の分散を介して植物の種子による繁殖や固体の移動を助け、植物の個体群の維持や分布の拡大に欠かせない存在である。
植物の多様性
植物の多様性はそこに生息する動物の多様性の基礎をなす。餌として多様な植物を利用するジェネラリストの哺乳類や鳥は種類を問わず植物を利用し、比較的体重が大きいため採餌量が多い。特定の植物だけを餌とするスペシャリストは昆虫に多い。餌とする植物が安定的に十分存在することがない限り、個体群を維持することが出来ない。しかし個体群が多いと言うことは、食害に対する物理的防御が強固であるともいえる。蝶や蛾の類が比較的存在量の少ないマイナーな植物を餌にすることは、餌がなくなる危険性もあるが他の動物との競争が少ないと言うメリットもある。小規模で、都市近郊の里山は「都市市民の憩いの場」として位置づけ、住民のレクレーションおよび「環境実践・実験の場」の提供として重要である。
自然を学ぶ場としての里山
再生された里山の雑木林は、これまで管理されなかった雑木林に比べて、生物の多様性が増大することである。林床には季節ごとに山野草が見られ、それを餌とする昆虫や、野鳥の観察が出来る森をつくることも意義があるように思える。

出展本の紹介:「里山の環境学」東京大学出版会、投稿者:nogu

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